
古民家をリノベーションしてうまれたコワーキングスペース。壱岐の” いいオフィス ”誕生秘話〜後編〜
みなさん、こんにちは。ローカル旅・島旅大好き、おがさひろこです。今年の春、私は長崎の離島・壱岐(いき)に長期滞在していました。博多から高速船で約1時間。とってもアクセスのいい離島なんです。
ある日「古民家を改装した、なんかいい感じの空間ができたらしい」との噂が。その空間の名は「いいオフィス壱岐 」。空き家を活用した事例として、早速取材に行ってきました!
「いいオフィス壱岐」の運営をしている柴山琢磨(しばやまたくま)さんに、誕生秘話を伺ってきました。別記事には「いいオフィス 壱岐」自体のインタビューもあるので、そちらもあわせてどうぞ!
人と人が交わる場所に。いいオフィス 壱岐の未来を語る。

Q:いいオフィス 壱岐をオープンしようと思ったきっかけはなんだったのですか?
話せばちょっと長くなるのですが…。僕は壱岐生まれで、高校までは壱岐で過ごしました。進学のために島を出て、長崎市内で大学生活を過ごしたんですけど、壱岐の市役所に就職が決まったので、壱岐に戻ってきました。
それから公務員として、市役所で14年間勤めていたんですが、「自分のやりたいことを仕事にしたい!」と思い、2年ほど前に公務員を退職しました。
実は、公務員の頃から「コワーキングスペースを作る!」というのが自分の目標の一つだったんです。
壱岐って観光客だけじゃなく、ビジネスマンも多いんですよ。ここ最近は移住者も増えましたし、壱岐と博多を行き来するノマドワーカーも多くなってきたんです。そういう人たちがラフにふらっと立ち寄れて、楽しく仕事できる場所があるといいなって思って。
Q:なぜこの空き家を選んだのですか?

ここは元々、僕が生まれた年に建てられた住居で、10数年前まで今は亡き祖父母が住んでいました。祖父母が亡くなってからは空き家になって、取り壊すこともできずに物置状態でした。
コワーキングスペースを作る時に、最初は港に近い郷ノ浦エリアの空きテナントを探していたのですが、なかなか条件に合うのがなくて。借家だと、家賃を払い続けても自分の資産にはならないないし、オーナー都合で出ていかないといけないリスクもあります。オーナーの所有物なので、利用も制限されますよね。自由に使える空間が、なかなか見つかりませんでした。
「あ~、いい物件がないな〜。」と煮詰まっていた時に、祖父母の空き家に目が留まって。
よく考えたら、僕自身、祖父母との思い出がある建物だし、自分と同じ年月を生きてきたこの空き家に何かを感じたんですよね。正直、空き家が「まだやれるよ!」って語りかけてきてるようで。久しぶりに2階に上って窓を開けてみたんですよ。そしたら、目の前に山々と田園風景が広がってて。
「ここめちゃくちゃいいじゃん!」ってなりました。
灯台下暗しとはこのことですね(笑)

築40年の物件だったので、傷んでいる所も結構ありましたが、こうして「いいオフィス壱岐」として生まれ変わりました。正直、「港から数分!」という立地の良い場所ではないですが、ちょうど壱岐の真ん中に位置してて、どの町からも来やすいんです。 豊かな自然に囲まれているので、周りには緑がたくさんあって、目に良い環境だと思います。パソコン作業に疲れた時は窓の外の風景に癒されてくださいね。
Q:こだわっている点はありますか?

単なるコワーキングスペースとしてだけではなく、もっと複合的な施設にしたかったんですよね。なので、ここはいろいろアレンジがきく場所です。展示会やワークショップに使ってもらったり、プロジェクターとスクリーンを使ってミニシアターを上映してみたり。交流会などのイベントスペースとしても使えます。
そして、もう一点こだわったポイントが「この家が持っていた元々の素材を生かす」というところです。都会にあるような「オシャレなコワーキングスペース!」という感じではなくて、この田園風景に溶け込むデザインにしようと設計士の方と進めていきました。外の景色がよく見えるように大きな窓にしたり、昔の柱と新しい柱が混在していたり、隠れていた梁を見せたり。内装も落ち着いたシックなものとなっています。
Q:今後、どのような場所にしていきたいですか?

この「いいオフィス壱岐」を中心に、何かが生まれる場所にしていきたいですね。島のクリエイターがワークショップやイベントを開いて、そこで交流が生まれたり、きちんとしたキッチン設備があるので、おためしレストランやカフェを1日限定とかで営業してもらってもおもしろいな、と。
実は「いいオフィス壱岐」ある地域は壱岐有数の米どころで、我が家もお米を作ってて、以前、皇室献上米の農家に選ばれたこともあるんですよ。正直、うちのお米より美味しいお米を食べたことがなくて(笑)そのお米を使ったおにぎりランチ等もしてみたいと思いますし、壱岐牛が近くにいるので、壱岐牛を見ながら壱岐牛を食べる「命の循環」を感じられるメニューもイメージしています。実家の空き部屋を使って、民泊にもチャレンジしたいと思っています。

あっちのカウンターではパソコンを叩いている人がいて、こっちのテーブルではお茶を飲んでいる人がいて。奥の座敷スペースではこじんまりとワークショップが開かれている。わざと境界線を曖昧にして、いろんな人たちがまざりあう空間にしていきたいと思っています。
「いいオフィス壱岐」ならではの暖かみや繋がりを感じてもらいたいですね。ここが人と人が関われる交流の場として成長し、島になじんでいったらいいなぁと思っています。 「何かやってみたい!」という人がいたら、このいいオフィスで何ができるかを一緒に考えて、どんどんコラボしていきましょう!この地域の自然環境はこのまま残しつつ、新たなカルチャーが生まれるスポットとして発展させて、壱岐全体をアップデートしていきたいですね。
自由に混ざり、新たに繋がり、何かが生まれる場所として。

見渡す限りの緑の風景。築40年の空き家だった建物が、新たに「いいオフィス壱岐」として生まれ変わりました。田舎の人がよく使う「何もない」環境で「何か」が生み出される場所になるような、そんな雰囲気を感じながら、取材をさせていただきました。
空き家活用を考えているみなさん、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。それではまた別の記事でお会いしましょう!
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住所
〒811-5741
長崎県壱岐市芦部町住吉山信触939-1
営業時間
10:00〜18:00
※不定休(休日は公式Facebookでお知らせ)